午前中に外出していた皆が戻ってきたと聞いて、
は嬉しそうな顔をして酒場へと早足で向かっていった。

「おかえりー!!」

と皆の姿を発見して手を振りながら近づいていく。
しかし、居ない人がいることに気がついたは辺りを見回していた。






sweetness







「あれ、、、バッシュとヴァンは?」

「荷物を置きに一旦部屋に戻ってます」

「荷物?そんなに報酬があったんだ」

「え、、、ええ。そうなんです」

「あらパンネロ、何その曖昧な返事は・・・?」

いえ別に何でも!と濁したパンネロ。
それに、どことなく皆が目線を遠くに逸らした気がしたのだけれど。




きっと、これは何かあったに違いない。。。
そう思ってはクルリと身を翻し来た道を戻ってゆく。

「確認してくる」

「大した事じゃないぞ

「だって何だか皆が白々しいし気になるもの」

また後でね、と口にしては腕組をしながら酒場を後にした。








「どうしたのかな・・・」




考えられる事はなんだろうか?

普通に皆が酒場に来たのだから大変なことがあったとは考えにくい。

でもわざわざ荷物を置きに行くって事は傍にあったら邪魔な物って事だ。
めちゃくちゃ大きい物とか、はたまた処理に困るような物とか。。。?



「う〜〜〜〜ん」


首を傾げながら宿屋の階段を上っていく
さっきフロントに聞いてみたが、まだ二人は部屋から出てないとの事だった。

扉の前に立ちノックをしようと手を上げる
そんな彼女の耳に何やら不可解な会話が聞こえてきたではないか。



「うっわ、絶対嫌だからなっ!!!無理だよ!」

「無理なことはない。丁度いい塩梅じゃないか」

「ちゃんと見て言ってるのかよバッシュ!入ってないだろ?!ナシだってこれはッ!」

「もう少し後ろにずらせばいいんじゃないか?」

「位置の問題じゃないって!いいから早く取れよー!!」




。。これは一体。。

「何・・・」

何の話をしているの。。。

いや、、というよりもそんな筈は無いし。絶対ない。
それにそんな事があっては困る。。。。

「・・・・・・・・・」

ああ、、、でも----!!

「待って!お願い、話をっ――・・・・っえ?!」

ガチャンと焦りながらドアノブを回して勢いよく部屋の中に入ってきた
しかし状況を見たの表情が困惑から驚きに変わりそして今度は笑いに変わった。


「ふ、、、っはは、、、あははっ!何それ、どうしたのヴァン」

口を開けて笑い始めた
バッシュは驚いただけのようだがヴァンは沸騰した様に頬を赤くしている。


「笑うなって!!!!!」

「そんなの無理だって―――あははっ!!!」

「こうなったのもバッシュのせいだからな!!」

ワナワナと赤い顔をしながら怒るヴァンをなだめるバッシュも何故か口元を手で隠している。
何だかんだフォローしていた割には笑っていたのだ。


「どうしたのそれ、、、ふ、はは、、、それが今日の戦利品なんだ。。。ふふっ」

「笑い過ぎだって!!バッシュもだよ!!」

「いや、、その、済まない。。だが似合ってると思うぞ」

「そんな事聞いてないって!あ〜〜〜も〜〜〜!!」


キーキー言い出したヴァン。
真剣に怒ったところで頭にかぶっているものがそれだとむしろ余計に可笑しく見える。


「あ、それ、、あれでしょ??。。ふふ、、“ネコミミフード”っていうやつ・・・ッはは」

はお腹を押さえながらまたも笑い出す。

「ああ、確かそんな名前だった筈だ。あまり手に入らない代物らしいぞ」

と、完璧にヴァンを蚊帳の外にした会話をするとバッシュ。

「でも、ヴァンに似合ってる。だって、ふふっ・・可愛らしいもの。。。うん。カワイイって」

「ああ、それに防御力も今より上るぞ」

にやけた笑いをしながら似合っているなどとフォローし始めた二人についにヴァンの堪忍袋の尾がきれる。



「だったら・が装備すればいいだろーー!!!」

かぶっていたネコミミフードを強引に取り去りに向かって飛び掛ってきたヴァン。

「いきなり何す・・・っ!!離してよ」

「笑われる身になってみろ」

「わ、ヤダ、そんなつけ方しないでよ!!」

「知らないねーだ」


ドタドタ、バタバタと騒ぎ押し問答のした結果、しゃがみこんでいたのは
無理やりつけられたネコミミフードを押さえながらヴァンを睨むように顔を上げた。


「外してよこれ!!食事に行けなくなっちゃう!もうっ!!」

悔しさで潤んだ瞳。
しゃがんだままの姿勢で下から見上げるその様を見たバッシュ。


この時、彼ははこう思ってしまった――



『マズイ・・・かなり似合っている』


捨て猫の様な雰囲気をかもし出され不覚にもツボに嵌って。。。。しまった―



そんな事を知りもしないは何とか外そうと一生懸命試行錯誤している。
ヴァンはというと「ざまあみろ!」と言い放ち笑いながら走って部屋を出て行ったのだった。





「ど、、、どうしよ。。本当に取れない・・」

ムゥと眉間に皺を寄せ困った顔をしていたは助けを求めてバッシュの元へと歩み寄った。

「お願い、これ取って欲しいのだけど。。。」

結び目を見るような仕草をしながら指を差して相手に教える

「見えないから自分じゃとれないんだもの」

だからお願いしていると理由を付け加えたのだがまったく返事がない。

「ねぇ、バッシュってば!」

唇を尖らせ相手を見ると、きちんとこっちを見ていではないか。
しかしの問いかけには反応しないまま。

「バッシュさ〜〜ん、何処見てるんですかー??」

右や左に体を揺らしてみるとちゃんと目線は自分を捉えている。
なのにやっぱり無反応だ。

「もう!バッシュってば!!何して―――。。って、え、何、何っ?!」

いきなり相手の大きな掌が頭の上に置かれ無造作にわしゃわしゃと撫でてくる。


「ちょっと、バッシュ」

名前を呼ぶと同時にその手を掴む。

「突然何するの!」

乱れた髪を直しながら相手の顔を見入る
自分がやったことに今頃気づいたのかバッシュはハッとした表情をした。




「―・・済まん」

バツが悪そうに逸らされた目線。

「どうしたの・・?さっきから変」

「ああ、、確かにそうかもしれないな」

「え、本当に変なの?」

「間違いないと思うが」


大丈夫?と訪ねるはバッシュが逸らした目線を捉えようと正面に移動する。
すると逃げるように相手は別の方向を見るため鼬ごっこが始まった。


右に行ったり左に行ったり。また右に行ったり左に行ったり。
最初こそ続けていたものの痺れを切らしたは相手の首筋に腕を回しピョンと抱きついた。

「ッ―!?」

いきなり密着した相手の体を支えようと慌てて腰に腕を回したバッシュ。
足が宙に浮いた状態のは見上げていた顔を今度は見下ろしている。



「白状して」

「大したことじゃない」

「それは私が判断すること」

「・・・・俺はただ」

「うん」

「率直に思っただけなんだが・・・」

「何を?」


ニコニコしながら答えを待っていただったが―


「ネコミミフードを着けた君がとても愛らしく感じてしまった、、、、」

「え。。。。。?」


その言葉を聞いてパチパチと何度も瞬きを繰り返す―

・・・?」

やたら考え込むような表情を一度してからがポツリと呟いた。



バッシュって。。。そういう趣味だったんだ・・」

「なっ・・!!」

断じて違う!と言い張っているくせにやけに顔が赤い。


「皆に言っちゃおうかなー」

「頼む・・・やめてくれ」

「じゃあ、もう少しこのままでいてくれる?」


と、笑顔で尋ねてくる

皆にこの事を言われなくて済むのならとあっさりと頷いたがその後すぐに気がついてしまった。
さっきの笑顔の裏には企みが潜んでいる事に―


は自分が被っていたネコミミフードを無理矢理外すと、
それを今度は事もあろうにバッシュに装着させようとその頭上に手を伸ばしていく。


自分の両手は相手を支える為に塞がれていて、逃れようにも動かせるのは顔だけ。
「観念なさい」と喋った唇が今度は動きを封じる為に自分のそれと重なっていた。

そして同時に頭の上にフードがのせられた感触があった。

唇を離し満足そうに微笑んだはこう思った。


『うわ、可愛い・・・』と。